受け継がれる匠の技

 江北の人々は、50年から100年に一度、仏壇を修理・塗り直す「お洗濯」を行なう慣行がある。釘を使用していない「浜仏壇」は、分解が容易で解体して修理を行なう「お洗濯」には適している。仏壇職人たちの「匠の技」は、この「お洗濯」を通して数百年受け継がれてきた。現在も、長浜市街地周辺では「浜仏壇」が製造される一方、この「お洗濯」も現在行なわれている。他方、同じ技術によってユネスコ無形文化財遺産となった「長浜曳山まつり」の曳山の定期的な修復が行なわれている。
一方、「浜ブランド」の繊維業の中で、「浜縮緬」の生産は健在である。今も、新たな製品開発に取り組みながら、「浜縮緬工業協同組合」加盟の12軒が操業している。「浜縮緬」の特徴的な製法である「八丁撚糸」を横糸にした反物は、シボ(しわ)をもつ独自の風合いがある白生地として、人々を今も魅了し続けている。
秀吉の経済政策への感謝が信仰に変わり、その信仰に根ざした「秀吉の町」としての誇りを背景に、城下町の枠組みをベースに、「浜仏壇」技術が伝承され、「浜縮緬」をはじめとする「浜ブランド」が財を生んだ。その結果、「長浜曳山まつり」の曳山が建造される。「浜仏壇」や「浜縮緬」の生産、それらが生み出した曳山。現在も、「まち」を歩けばその姿を、日常の長浜の中に見出すことができる。
(2020年「日本遺産」申請書から)